ピル。 聞いたことあるけど、具体的にはどんなのかよく知らない…というかたも多いと思います。 こちらではピル、主に低用量ピルについて、もっとも基本的なことを簡単にまとめたいと思います。もっと詳しい話は、専門の本やサイトさんでご覧になってくださいね。
【ピル(pill=錠剤、丸薬の意)】
女性ホルモンである、「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」を配合した薬です。 これらのホルモンは人工的に合成されたものですが、体内で自然に分泌されるものとほとんど変わりません。 「ホルモン剤」…どことなく不安な響きかもしれませんが、ピルはホルモンを乱す薬ではなく、むしろ整えてくれます。 低用量、中用量、高用量があります。 (よく「容量」と間違われますが、メモリではなく薬なので、「用量」です) さらに低用量ピルの中には、 ●全ての錠剤のホルモン配合比が同じ「一相性」 ●服用途中から錠剤中のホルモン配合比が変化していく「段階型」 があります。 (さらにさらに、段階型ピルには「ニ相性」と「三相性」がある。) 要指示薬といって、医師の処方がないと入手できません。国によっては、薬局で入手できます。
【低用量・中用量・高用量の違い】
一言で言うと、「含まれるホルモン量の違い」です。 正確には卵胞ホルモン(エストロゲン)量の違いによります。 ピルによる主な副作用「悪心」「嘔吐」などは、エストロゲン量に左右されます。 エストロゲン量をぎりぎりまでおさえた低用量ピルは、これらの副作用が出にくくなっています。
【服用方法】
低用量ピルは、「21日間錠剤を服用し、その後7日間休薬する」というサイクルで使用します。 基本的には、はじめて飲むときは「生理の初日」から服用開始します。この場合、開始当日から避妊効果が得られます。 ホルモンは血液により全身を循環します。ホルモンの血中濃度を一定にするため、毎日同じくらいの時間に服用することが大事です。
【低用量ピルの形式】
低用量ピルには、「21錠タイプ」と「28錠タイプ」があります。 ●21錠タイプ……1シートの錠剤21錠を全て飲んだら、その後7日間は何も飲みません(休薬期間)。 ●28錠タイプ……22錠めから28錠めが「偽薬(プラセボ)」となっています。プラセボにホルモンは含まれませんので、飲んでも休薬期間を取ったのと同じことになります。欠かさず飲むことで飲み忘れを防止する意味合いです。 ★偽薬(プラセボ)に対して、ホルモンの含まれている錠剤を「実薬」といいます。
【効果】
21日間はホルモンによって排卵が抑制されます。また通常に比べ子宮内膜の増殖が少なくなります。(体の状態を異常にしているのではなく、自然な状態で休憩してもらう、という感じです) 排卵がありませんので、セックスがあっても受精が起きません。万一排卵・受精が起きても、子宮内膜が充分に増殖していませんから、受精卵は着床できません。また、子宮頚管の粘液の状態が変化し、精子が入り込みにくくなります。 妊娠は、受精卵が子宮内膜に着床してはじめて成立するものです。 ですから、受精、あるいは着床が起きないことで、非常に確実性の高い避妊効果が得られます。 21日間の服用後、7日間の休薬期間中にホルモンの抑制が外れます。 これにより子宮内膜が剥落し、生理様の出血が起きます。 (ピルを飲まない通常の生理も、体内のホルモン分泌が低下するために起こるものです) ピルの効果で子宮内膜はあまり増殖していませんから、通常の生理より軽くなることが多くなります。また、生理痛の軽減も期待できます。 休薬期間が終わったら、生理が終わっていても続いていても、新しいシートを開封して服用再開。 ※正しく服用再開する限りは、休薬期間も避妊効果は変わらず続いています。
【副作用】
低用量ピルはホルモンの含有量が少ないため、副作用は出にくくなります。 しかし初めて飲む場合、10〜20%くらいの割合で、飲み始めごろにつわりのような症状を感じる人がいます。ホルモン環境の変化(決して「異常な状態への変化」ではない)によるものなので、まもなく体が慣れておさまる場合がほとんどです。 症状が強かったり、長期間続くような場合は、飲んでいる製品が体に合っていないかもしれません。(製品によって、「使われている合成ホルモンの種類」「1錠中のホルモン量や配合比」が異なるので、それがたまたま体に合わないということがある)医師との連携で、自分に一番合う製品を探してみてください。 ほかに副作用としては、ある病気の発生率が高まります。
【副効用】
副作用に比べ、副効用については聞き慣れないかたもいらっしゃるかもしれません。 ピルの主な効果は避妊です。それ以外のピルの利点についてです。 【効果】の項にもありますが、ピル服用中は子宮内膜があまり増殖しないため、一般に生理が軽くなります。この経血量減少と、さらに排卵抑制効果に関連して生理痛がやわらぐことも多くなります。 また、「21日飲んだあと、7日休薬している間に生理が起こる」という流れを繰り返すことになりますので、結果として生理周期が非常に安定することになります。 これをうまく利用すれば、生理予定日を自分でコントロールすることもできます。 なお、生理日調整には一相性ピルが便利です。(錠剤によってホルモン配合比が異なる段階型だと、うまく生理日を変えるためには慎重に錠剤を選んで飲む必要があります) ほかに、ある病気の発生率が低くなります。
【ピルを飲める人・飲めない人】
ピルも薬です。人によっては、「飲んではいけない場合」「飲むのに注意が必要な場合」があります。 ごく端的に言ってしまえば、「自分も家族も健康」という人はだいたい飲めるはずです。
【服用時の注意点】
ピルは、「正しく飲むこと」がもっとも重要です。 飲み忘れや飲み間違いがあると、避妊効果は一気に落ちます。 激しい下痢や嘔吐などが続き、ピルの成分がうまく吸収されなかった場合も同様です。 また、相互作用のある薬品やハーブなどにも注意が必要です。 (市販のお薬では今のところ、相互作用のあるものはないそうです。ハーブについては「セントジョーンズワート」「チェストベリー」が相互作用をもちます)
【ピルを入手するには】
まずは病院に行きましょう。女性の体の専門家である婦人科/産婦人科がベストです。事前に電話をして、低用量ピルを扱っているか、予約が必要かどうかなどを聞いてみると良いです。 病院に行くと、 問診票の記入→問診→尿検査や血圧測定など というような流れで処方にいたることになります。 病院によっては、採血や身長・体重測定などもします。 ついでに子宮癌や乳癌の検診、感染症の検査なども頼んで受けてしまえば、より安心してピルを飲み始めることができると思います。 ピルは健康な女性が飲むものですので、健康保険は適用されません。自費扱いとなります。 具体的には初診の場合、「薬代(1シート2500〜3000円くらい)+その他の検査代など(数千円)」、というところが多いようです。初診でも薬代だけで処方してくれる病院もあります。 最初の処方は1シートのみで、以後は様子を見ながら3シートくらいずつ購入することになる場合が多いと思います。 長期間服用を続ける場合は、 「問診と検診(血圧測定、臨床検査、乳房・腹部の検査など必要なもの)を6か月ごとに、子宮頸部の検査を1年に1回受けるようにしてください。また、糖尿病あるいはその疑いのある人は、医師に相談し定期的に血糖値などの検査を受けるようにしてください」 ということになっています。(服用者向け情報提供資料より) 参考: 『安全・確実!安心のピルの本』(保険同人社) 『家族計画指導の実際』(医学書院) 『妊娠中から考えるお産の後のあなたと赤ちゃんの健康 別冊 IUD&ピル』(日本オルガノン株式会社) 『Birth Control Manual〜避妊を正しく実行するために〜』(日本シエーリング株式会社) 『トライディオール21・28服用者向け情報提供資料』(日本ワイスレダリー株式会社) 『トリキュラー21・28服用者向け情報提供資料』(日本シエーリング株式会社) |